田中 重人 <http://tsigeto.info/25x>第98回日本社会学会大会 (2025-11-15)
(東北大学)
[Abstract] (on the Conference website)
[第98回日本社会学会大会] / [報告要旨集 (1日目午後)]
[Abstract] (on the Conference website)
調査対象個別の情報レコードを保持するデータ (ミクロデータ、個票データ、調査票情報などと呼ばれる) の二次利用と、公的統計 (行政機関、地方公共団体、独立行政法人等が作成する統計) が追究すべき真実性との関連について、相反するふたつの意見がある。一方には、個人や団体の秘密やプライバシーにふれる内容をふくむデータが本来の目的以外に流用されるとなれば、それによって不利益を被るのではないかという不安を調査対象者にあたえることになり、協力拒否や虚偽回答を誘発して統計の真実性を毀損する、という意見がある。他方で、ミクロデータが広く使われることで、データの問題点が洗い出されて、統計の真実性を高めることに貢献する、という意見もある。
【統計法の規定】 日本の公的統計は、前者の意見を重視して、ミクロデータの二次利用に関する厳重な制限規定を用意している。統計法 (2007年法律53号で全面改正、2022年最終改正) のミクロデータ提供規定は、現実世界の調査対象者に対応するデータ中の個別のレコードを「識別」できないところまで匿名化処理を進めた「匿名データ」 (統計法36条) と、匿名化がじゅうぶんでないため調査対象者を識別できる可能性の残る調査票情報 (統計法33条、33条の2) の2種類にわかれる。前者は情報を粗くしたり削除したりしている上に、現在までに提供されているデータがすくなく、あまり利用されていない。後者は原情報をかなりよく保持したデータが入手できるので利用件数が多いが、手続きが煩雑で利用上の制限事項が多いため、提供を受ける研究者からの不満がしばしば聞かれる。
【ヤミ統計】 ところが、統計法のこのような規定の対象となるのは、公的統計のうち、「基幹統計」として指定された統計 (現在54件) と、「一般統計調査」のカテゴリーに入る調査で作成される統計だけである。これらに該当しない統計は統計法の管理外なので、しばしば「ヤミ統計」と呼ばれる。事実に関する調査ではない、いわゆる「世論調査」や、不特定多数を対象とする (対象者を個別に指定しない) インターネット調査などが代表的である。このような調査によるデータは統計法の制約を受けないので、上記以外の方法でミクロデータを提供できる。
【二次利用の状況】 この種の統計について包括的な情報収集はおこなわれていないので、どんな統計がどれくらいあってどのようにデータが利用されているか不明である。東京大学社会科学研究所「SSJデータアーカイブ」での寄託者名検索 (2025年6月17日) では、統計法が全面改正された2007年以降、行政機関 (府・省・庁) からのデータ寄託がコンスタントに毎年あることがわかる。内閣府『全国世論調査の概況』に掲載の「政府機関・政府関係機関」による世論調査件数を大きく下回るものの、すくなからぬ研究者がこのような (統計法に基づく匿名データ/調査票情報提供より制限の緩い) かたちで公的統計ミクロデータを利用していることは確かである。そして、最初に述べたふたつの意見に照らすなら、このような状況は、公的統計の真実性に影響をあたえている可能性がある。 本報告では、このようなミクロデータ二次利用の現状を検討し、日本の公的統計制度における品質管理のありかたについて考察する。
(本研究はJSPS科研費 JP24K05302 の助成を受けたものである。詳細は http://tsigeto.info/25x 参照)
ご質問/ご意見をお寄せいただけると幸いです:
[要旨 (大会ウェブサイト)] [報告用スライドPDF (1 MB)]
関連するサイトとページ:
History of this page:
This page contains Japanese characters encoded in accordance with MS-Kanji: "Shift JIS".
Generated 2025-11-14 13:20 +0900 with Plain2.
Copyright (c) 2025 TANAKA Sigeto